「さっきまでご機嫌だったのに、哺乳瓶を見せた途端にプイッと横を向いてしまう…」 「飲む量が目安よりも全然少なくて、体重が増えているか心配」
初めての育児において、赤ちゃんの**「ミルク拒否」や「飲みムラ」**は、パパやママを最も不安にさせる悩みのひとつです。「私の飲ませ方が悪いのかな?」「栄養が足りていないのでは?」と焦るあまり、毎回の授乳時間がストレスになってしまってはいませんか?
まずお伝えしたいのは、**赤ちゃんがミルクを飲まなくなる時期は、多くのご家庭で経験する「育児あるある」**だということです。決して、あなたのせいではありません。
実は、赤ちゃんがミルクを飲まないことには、必ず理由があります。それは単なるわがままではなく、彼らなりの「サイン」なのです。その多くは、ちょっとした環境の変化や工夫で解決できる一時的なものです。
この記事では、育児の専門知識に基づき、赤ちゃんがミルクを飲まない主な原因と、今すぐ家庭で試せる具体的な対処法を分かりやすく解説します。さらに、月齢別の特徴や、心配な脱水症状への対応についても網羅しました。
焦らず、赤ちゃんの気持ちに寄り添いながら、解決の糸口を一緒に見つけていきましょう。
なぜ飲まない?育児中のミルク拒否・飲みムラの主な原因
赤ちゃんがミルクを拒否する場合、そこには言葉にできない不快感や理由が隠れています。まずは基本となる以下の4点をチェックしてみましょう。
原因1:哺乳瓶や乳首(ニップル)が合っていない
最も多い原因の一つが、哺乳瓶の乳首(ニップル)の問題です。赤ちゃんは成長とともに吸う力(吸引力)が強くなり、口のサイズも変化します。
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サイズが合っていない(出方が悪い・良すぎる):
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成長して吸う力が強くなっているのに、新生児用(SSやSサイズ、丸穴)を使い続けていませんか?一生懸命吸っても少ししか出ないと、赤ちゃんは疲れて飲むのを諦めてしまいます。
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逆に、月齢よりも大きなサイズ(Lサイズ、スリーカットなど)を使っていると、ミルクが出すぎてむせてしまい、飲むのが怖くなっている可能性もあります。
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劣化や匂い:
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乳首はシリコンやゴムでできており、消耗品です。長期間使用して弾力がなくなっていたり、特有のゴム臭が強くなっていたりすると、敏感な赤ちゃんはそれを嫌がることがあります。こまめなチェックと交換が必要です。
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原因2:ミルクの温度や味が気に入らない
大人が思う以上に、赤ちゃんは味覚や触覚(温度)に敏感です。
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温度の好み:
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教科書通りの「人肌(約37〜40度)」が正解とは限りません。冬場は作っている間に冷めてしまい、冷たいミルクを嫌がっていることも。逆に、少し熱めを嫌う猫舌の赤ちゃんもいます。
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味(メーカー)の違い:
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粉ミルクはメーカーによって、母乳に近い甘みのもの、あっさりしたものなど、風味に微妙な違いがあります。特に混合育児から完ミ(完全ミルク)へ移行する際や、サンプル品から別のメーカーに変えたタイミングなどで、味の違いに戸惑って飲まなくなることがあります。
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原因3:お腹が空いていない・眠い・遊びたい(遊び飲み)
生後3〜4ヶ月頃から増えるのが、周囲への興味による「集中力の欠如」です。
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遊び飲み:
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視力が発達し、周囲の音や景色、ママの顔などに興味津々になります。授乳中もキョロキョロしたり、乳首を噛んで遊んだりして、飲むことに集中できなくなります。
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生理的な理由:
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運動量が少ない日は単純にお腹が空いていなかったり、眠気のほうが勝って飲むのを嫌がることもあります。また、授乳間隔が短すぎる場合も、空腹感が育たず飲みが悪くなります。
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原因4:体調不良や口の中のトラブル
いつもと様子が違う場合は、体調不良も疑いましょう。
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口の中のトラブル: 口内炎や、白いカスのようなものが付着する「鵞口瘡(がこうそう)」ができて痛みがあり、飲めないケースがあります。
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鼻詰まり: 赤ちゃんは基本的に鼻呼吸です。風邪などで鼻が詰まっていると、ミルクを飲む際に息苦しくなり、飲み続けることができません。
【月齢別】ミルクを飲まない「あるある」とその対策
赤ちゃんの成長段階によって、「飲まない理由」の傾向は異なります。月齢ごとの特徴を見ていきましょう。
新生児〜3ヶ月頃:飲むのが下手、すぐ疲れる時期
この時期の赤ちゃんは、まだミルクを飲むこと自体に慣れておらず、体力もありません。
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特徴: 一生懸命吸っているうちに疲れて寝てしまったり、上手に飲み込めずに口からこぼしてしまったりすることが多いです。
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対策: 途中で寝てしまったら、足の裏をくすぐったり、オムツを替えたりして優しく起こしてあげましょう。また、授乳中にこまめにゲップを出させて、お腹の張りを解消してあげることも大切です。
4ヶ月〜6ヶ月頃:遊び飲み全盛期、成長の停滞期
首がすわり、周囲への関心が高まる時期です。「中だるみ」とも呼ばれる、体重増加が緩やかになる時期でもあります。
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特徴: 少し飲んでは乳首を離してニコニコしたり、仰け反って嫌がったりします。「遊び飲み」が本格化します。
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対策: 授乳環境を静かに整えることが最優先です。また、この頃から始まる「離乳食」の影響で、一時的にミルクの量が減ることもありますが、元気であれば過度な心配はいりません。
7ヶ月〜1歳以降:離乳食が進み、卒乳への準備期間
離乳食が1日2〜3回と進んでくると、栄養の主体が食事へと移り変わっていきます。
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特徴: 離乳食をしっかり食べている場合、自然とミルクの回数や量が減ってきます。また、コップやストロー飲みの練習が始まると、哺乳瓶自体を嫌がる子も出てきます。
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対策: 離乳食が順調で、体重も成長曲線の範囲内であれば、無理にミルクを飲ませる必要はありません。食事やおやつからの水分・栄養摂取を意識し、徐々にフォローアップミルクや牛乳(1歳以降)への移行を検討しましょう。
今すぐ試せる!ミルクを飲んでもらうための対処法6選
原因が特定できない場合でも、環境やアプローチを変えるだけで、嘘のように飲み始めることがあります。以下の方法を順に試してみてください。
乳首のサイズアップ・種類変更を試す
月齢の目安よりも、**赤ちゃんの「吸う力」と「飲むペース」**を観察して判断します。「飲むのに時間がかかりすぎて疲れている」「飲んでいる途中で怒り出す」場合は、ワンサイズ上げてみましょう。 また、乳首の形状(丸穴、スリーカット、クロスカット)を変えることで、ミルクの出る量やスピードが変わり、飲みやすくなることもあります。
ミルクの温度を微妙に変えてみる(ぬるめ・温かめ)
火傷には十分注意が必要ですが、好みの温度を探ってみましょう。
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温かめが好き: いつもの温度(約40度)より少しだけ温かい42度くらいを好む子もいます。
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ぬるめが好き: 夏場などは、常温に近いぬるめのミルクを好む子もいます。
授乳の環境を「全集中」モードにする
「遊び飲み」対策には、刺激を徹底的に排除します。
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テレビやスマホの動画は消す。
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カーテンを閉めて部屋を薄暗くし、静かな環境を作る。
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授乳中は赤ちゃんに話しかけすぎず、目を見つめて落ち着かせる。 これだけで、授乳モードに切り替わってくれることがあります。
授乳の体勢や抱き方を変えてみる
いつも横抱きなら、少し体を起こした「縦抱き」授乳を試してみましょう。ミルクの流れ方が変わり、飲みやすくなることがあります。また、ママ・パパの腕の緊張が伝わらないよう、クッションなどを使ってリラックスした姿勢を保つことも大切です。
パパ・ママ交代作戦!授乳担当者を変える
「ママだと甘えて母乳を欲しがるけれど、パパだと諦めて哺乳瓶で飲む」「パパの大きな手だと落ち着く」など、授乳者が変わることで気分転換になり、すんなり飲むケースは意外と多いものです。育児連携の良い機会にもなります。
授乳リズムをリセット(空腹時間をあえて作る)
飲まないからといって、1時間おきに頻繁に哺乳瓶を口に近づけていませんか?これでは常に満腹中枢が刺激され、しっかりとした空腹感が育ちません。 一度、思い切って授乳間隔を3〜4時間空けてみましょう。しっかりと空腹を感じさせることで、「お腹が空いた!飲みたい!」という意欲を引き出す荒療治ですが、効果的な方法です。
これって「哺乳瓶拒否」?母乳実感との違いと克服法
特に母乳育児からミルクを足そうとした際や、完母(完全母乳)から保育園入園に向けてミルクの練習を始めた際に起こりやすいのが、頑固な「哺乳瓶拒否」です。
母乳と人工乳首の決定的な違い
赤ちゃんにとって、ママのおっぱい(母乳)は温かく、柔らかく、安心できる匂いがします。一方、シリコン製の人工乳首は、どんなに工夫されていても「異物」と感じてしまうことがあります。特に生後3ヶ月を過ぎて知恵がついてくると、その違いを敏感に察知して拒否することがあります。
空腹のピークを狙うタイミング調整術
お腹がいっぱいの時や、眠くて機嫌が悪すぎる時に練習しても、赤ちゃんにとっては迷惑なだけです。 お風呂上がりや、お昼寝からスッキリ目覚めた後など、**「喉が渇いていて、かつ機嫌が比較的良いタイミング」**を狙いましょう。最初は10ml〜20ml程度の少量から、飲む練習としてトライするのがおすすめです。
ママの匂いと温度を活用する裏技
パパや他の家族が授乳する場合、ママの匂いがついたタオルやガーゼを赤ちゃんの顔の近く(首元など)に置いて安心させてみましょう。また、飲む直前に哺乳瓶の乳首をお湯で温め、人肌に近い感触にしておくのも効果的です。
どうしてもダメならスプーンやコップを試す
哺乳瓶をどうしても受け付けない場合は、無理強いせず他の方法を試します。スプーンで少しずつ流し込んだり、生後数ヶ月から使えるスパウトやトレーニングマグ、コップを使って飲ませることも可能です。一時的な哺乳瓶拒否の時期を、これらのアイテムで乗り切るご家庭も多いです。
ミルクを飲まない時の水分補給はどうする?脱水予防策
ミルクは栄養だけでなく、重要な水分補給源でもあります。ミルクを飲まないと「脱水症状」が心配になります。
月齢別・飲ませていい水分(白湯、麦茶、イオン飲料)
基本的にはミルクや母乳で十分ですが、どうしても飲まない時や、お風呂上がり、汗をかいた時などの補助的な水分補給として活用します。
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生後2〜3ヶ月頃から: 湯冷まし(白湯)や、赤ちゃん用の麦茶・ほうじ茶を薄めたものを少量から。
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生後3ヶ月以降: 発熱時や下痢などで脱水が心配な場合は、赤ちゃん用のイオン飲料(経口補水液)も医師の相談のもと使用を検討します。ただし、糖分が含まれるため日常的なガブ飲みは避けましょう。
最低限必要な水分量の目安
体重1kgあたり、1日に必要な水分量はおよそ以下の通りです。
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〜3ヶ月: 140〜160ml/kg
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3〜6ヶ月: 130〜150ml/kg
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6ヶ月〜1歳: 110〜130ml/kg 例えば体重6kgの赤ちゃんなら、1日に約800ml前後の水分が必要です。これは母乳やミルクに含まれる水分も含んだ量です。食事(離乳食)からの水分もカウントされます。
病院を受診すべき「危険なサイン」チェックリスト
「飲まないけれど、様子を見ていいの?」それとも「すぐ病院?」の判断は難しいものです。以下のサインがある場合は、迷わず受診してください。
脱水症状のサイン(おしっこ・唇・活気)
以下の症状がある場合は、中等度以上の脱水症状の疑いがあります。早急に小児科を受診するか、夜間休日の相談窓口(#8000など)に連絡してください。
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おしっこ: 半日以上出ていない、回数が極端に少ない、色が濃いオレンジ色をしている。
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見た目: 唇や口の中がカサカサに乾燥している、皮膚に張りがない、目がくぼんでいるように見える。
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様子: 泣いても涙が出ない、ぐったりして活気がない、呼びかけへの反応が鈍い。
機嫌の悪さ・発熱・嘔吐を伴う場合
ミルクを飲まないだけでなく、機嫌が悪くずっと泣いている、38度以上の熱がある、噴水のように繰り返し吐くといった症状がある場合は、風邪や胃腸炎、その他の病気が隠れている可能性があります。自己判断は禁物です。
こんな時どうする?よくあるQ&A
Q:体重が増えていれば、飲む量が少なくても大丈夫?
A:はい、基本的には大丈夫です。 ミルク缶に記載されている目安量は、あくまで平均値です。赤ちゃんの体格や代謝によって必要な量は異なります。母子手帳の成長曲線に沿って体重が増えており、機嫌よく過ごせていれば、その子なりのペースで成長している証拠です。飲む量そのものよりも「成長とご機嫌」を基準にしましょう。
Q:無理やり口に押し込んで飲ませてもいい?
A:絶対にやめましょう。 泣き叫んでいる時に無理やり哺乳瓶を口に押し込むと、ミルクが気管に入ってむせたり、窒息の原因になったりする危険があります。何より、哺乳瓶自体に「怖い・嫌なもの」というトラウマを植え付けてしまい、さらに頑固なミルク拒否につながる恐れがあります。飲まない時は一旦切り上げ、時間を空けてリトライしましょう。
Q:母乳は飲むけど、ミルクだけ嫌がる時は?
A:母乳で足りている可能性もあります。 混合育児で、母乳の後にミルクを足そうとしても飲まない場合、単純に母乳でお腹がいっぱいになっている可能性が高いです。体重増加が順調なら、無理に足す必要はありません。どうしてもミルクに慣れさせたい場合は、空腹時にまずミルクから少量試すなど、順番を工夫してみましょう。
まとめ:赤ちゃんのペースに合わせて長い目で見守ろう
育児において、マニュアルや教科書通りにいかないことは日常茶飯事です。ロボットではない生身の人間を育てているのですから、当然のことです。
ミルクを飲まないことは、赤ちゃんの成長過程で起こる一時的な「ブーム」のようなものかもしれませんし、何らかの不快感のサインかもしれません。大切なのは、親が焦って追い詰められないことです。
今回の重要ポイントのおさらい:
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まずは乳首のサイズ、ミルクの温度、**授乳環境(遊び飲み対策)**を見直す。
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月齢ごとの特徴(疲れやすい、遊び飲み、離乳食の影響)を理解する。
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どうしても飲まない時は、おしっこの回数や脱水サインだけ注意深く観察し、1回授乳を休んでみる勇気を持つ。
今日飲まなくても、明日は飲むかもしれません。一人で悩み込まず、地域の保健師さんや小児科医、そしてパートナーと相談しながら、少し肩の力を抜いて、赤ちゃんと向き合ってみてくださいね。